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月刊wan2005年6月号

「ワクチンAtoZ」

危険な病気を未然に防ごう!

 

連日の長雨で犬も人も運動不足気味。梅雨が明けたら、公園やドッグランで思い切り犬を遊ばせようと楽しみにしているあなた。ペットホテルや動物病院に犬を預けて旅行を計画しているあなた、ちょっと待ってください!お宅のワンちゃんワクチン接種は済んでいますか? ワクチン接種をまだ受けていない子犬はもちろん、何年も接種を受けていない犬は要注意。犬の世界には、感染力が強く発病すると治療をしても助かることの少ない恐ろしい感染症がまだまだたくさんあります。また、これからお話しする狂犬病やレプトスピラといった病気は犬だけでなく人にも感染する人獣共通感染症です。愛犬のためだけでなく自分自身や家族の健康のためにもワクチン接種を受けて、安心して夏のレジャーを楽しみましょう。

 

ワクチンの仕組みについて教えて?

 

犬のワクチンについてお話しする前に、ワクチンによる病気予防の仕組みをちょっと勉強しておきましょう。細菌やウィルスなどの微生物が動物の体の中に入り込んでおこる病気を「感染症」といいます。動物の体にはこうした細菌やウイルスなどの外敵から身を守るために、体内に入った異物を退治しようとする「免疫」というシステムがあります。一度、異物が入って免疫が作られると、リンパ球に記憶され、次に同じ異物が入って来たときにはよりすばやく簡単にやっつける事ができるようになります。つまりワクチンとは、動物の体がもともと持っている防御システムを利用して、感染症に対する抵抗力を作らせておくお薬の一種です。ワクチンにはウィルスや細菌の毒性を無くした「不活化ワクチン」と生きたまま毒性を弱めて作った「生ワクチン」の2つのタイプがあり、不活化ワクチンは短期間で効果が無くなってしまうため、定期的に追加接種を受ける必要があります。

 

犬のワクチンにはどんな種類があるの?

 

犬のワクチンには狂犬病ワクチンのようにひとつの病気だけを予防するものと、5種、7種、8種というようにいくつかの病気を一本の注射でまとめて予防する「混合ワクチン」があります。混合ワクチンの場合、予防できる病気の数や組み合わせは薬品メーカーによって異なり、タイター(力価)と呼ばれるワクチンの効力もメーカーによって様々です。ご自分の犬に何種混合を接種するかは自由ですが、犬種や健康状態、年令、環境、地域性などを考慮して、その犬にもっとも適したワクチンを獣医師に選択してもらうのがよいでしょう。

 

ワクチンで予防できる犬の病気ってどんなの?

 

一口に犬の感染症といっても数え切れないほどたくさんの種類があります。このうちワクチンで予防できる病気には、感染力、死亡率ともに高く確実な治療法のない病気や犬から人に感染する可能性のある「人獣共通感染症」が含まれています。

 

1. ジステンパー 

くしゃみ、鼻水、咳などの呼吸器症状や下痢、血便、嘔吐などの消化器症状を主とする犬の代表的なウィルス感染症です。死亡率が高く、脳炎をおこすといったん回復してもけいれんやチック、運動失調などの後遺症が残ることがあります。

 

2.アデノウイルス1型感染症(犬伝染性肝炎)・2型感染症

 1型は肝炎を起こし、発熱、下痢、嘔吐といった症状のほか、黄疸が出たり、子犬では突然死をおこしたりすることがあります。2型は呼吸器の症状が主で乾いた咳が続き、放置すると肺炎に移行することがあります。    

 

3.犬パラインフルエンザ 

長く続くがんこな咳が特徴で、人のインフルエンザのように子犬が集団生活をする場所で流行します。アデノウイルスや他の細菌と混合感染して「ケンネルコフ」とよばれる特徴的な呼吸器疾患をおこします。

 

4.パルボウイルス感染症 

1980年頃から世界中に広がった比較的新しい感染症で、感染力、死亡率ともに非常に高いため、当初はコロリ病と恐れられました。症状は発熱を伴った激しいトマトジュースのような血便と嘔吐を繰り返し、脱水によってみるみる衰弱します。感染した犬の排泄物にはウィルスが大量に含まれますが、消毒薬に強く、体外に排泄されたあとも6ヶ月以上も生存して接触した犬に感染します。子犬の場合、消化器症状を起こさずに心筋炎をおこして突然死するケースもあります。

 

5.レプトスピラ症 

レプトスピラという細菌によって腎臓や肝臓が冒される感染症です。この病気は人に感染することもある人獣共通感染症で、犬に発生した場合、獣医師はただちに届け出ることが義務づけられています。感染動物(ネズミ、イヌ)の尿を介して感染し、歯茎の出血や黄疸が見られる黄疸出血型と、高熱、嘔吐、下痢を起こすカニコーラ型の2種類があります。アウトドアで活動する機会の多い犬ほど感染しやすいので、予防が大切です。

 

6.コロナウイルス感染症 

下痢や嘔吐などの消化器症状をおこすウィルス感染症で、子犬に感染すると症状が重く、パルボウイルスと混合感染するとさらに症状を悪化させて死亡率を高くすることが知られています。

 

7.狂犬病

人を含むあらゆる温血動物に感染し、発病すると死亡率ほぼ100%という地球上でもっとも恐ろしい人獣共通感染症です。最近、「狂犬病の予防接種なんて必要ないんじゃない」という声を耳にすることがあります。しかし、アフリカやアジア諸国はもちろんのことアメリカやカナダでも毎年のように発生がみられ、世界中で今なお年間4万〜5万人が狂犬病の犠牲になって亡くなっています。 WHOではイヌの狂犬病ワクチンの接種率を75%以上にするよう勧告していますが、日本の未登録犬を含めた接種率は50%以下だろうといわれています。いま日本に狂犬病が上陸したら、大流行がおきて国中が大パニックにおちいる可能性もあるのです。狂犬病ワクチンについては、狂犬病予防法という法律によって生後3ヶ月以上のすべての犬に、年1回の接種と注射済票の交付を受けることが義務づけられています。接種は毎年4〜6月に各地で実施される「集合注射」または最寄りの動物病院で一年中受けられます。また、新たに飼い始めた犬やまだ登録の済んでいない犬は市区町村に登録の申請をして鑑札の交付を受けなければなりません。

 

子犬のワクチン−いつ頃から、何回打てばいいの?

 

 恐ろしい感染症から愛犬を守るためには、子犬のうちから一日も早くワクチン接種を受けさせたくなるのが人情です。ところが子犬のワクチン接種は早ければいいというものではありません。というのは、子犬は生まれてしばらくの間は母犬の胎盤や初乳を通じて受け継いだ「移行抗体」とよばれる免疫で守られているため、早い時期にワクチンを接種してもブロックされてしまい、十分な免疫が得られない可能性があるのです。しかも、この移行抗体が残っている期間は子犬によってまちまちで、簡単には調べられません。そこで、この移行抗体の切れかかる時期をねらって、生後4〜7週目に1回目の混合ワクチンを接種し、その後、より確実な免疫をつけるために3〜4週間隔でさらに1〜2回の追加接種を受けるのが一般的な子犬のワクチネーションプログラムです。ただし、ワクチンの接種時期と回数は使用するワクチンのメーカーや種類、その子犬の成長具合や健康状態、飼育環境などによって異なるため、「2回だけでは心配」だとか「3回は多過ぎ」というような素人判断は危険です。獣医師のアドバイスに従って、確実な免疫が得られるプログラムでワクチン接種を受させましょう。

 

年1回の追加接種ってほんとに必要? 

 

ワクチンによる免疫は一生涯続くものではなく、時間の経過とともに徐々に薄れてゆきます。この免疫が完全になくならないうちに、年に1回追加接種を受けさせることで下がってきた抗体価を再び上昇させ、感染に対する免疫力を高めることができます。これをブースター効果と言います。近年、欧米でワクチン接種は3年に1回でOKとする学説が発表され、日本でもこれを支持する獣医師も少なからずいるようですが、不活化ワクチンであるレプトスピラの免疫は1年程度しか持続しませんし、混合ワクチンの接種率が欧米に比べて著しく低い日本ではまだまだ不安が残ります。犬の健康状態に支障のない限りは、従来通り年に1回の追加接種を受けておくのが安心でしょう。

 

ワクチンの副作用についても教えて?

 

「ワクチンと聞くと副作用が心配」という方も多いと思いますが、最近のワクチンは、安全性にも優れていて、副作用がおこる確率はおよそ1万頭に1頭とごくごくまれです。それでも小さな体の中に病原体を入れるわけですから、接種の前後は十分な注意が必要です。

1.ワクチン接種を受ける前に注意すること 

ワクチン接種を受ける当日は犬の健康状態をチェックし、下痢、嘔吐、発熱などの異常がある場合は接種を避けて下さい。また、接種直前にほえて興奮したり、激しい運動をしたりすると体温が上昇して、接種前の検温が正しく行えなくなる場合があるので、気をつけましょう。

2.ワクチン接種後受けた後で注意すること 

ワクチンを接種した後、極めてまれですが、血圧低下、呼吸困難といった急性のショック症状(アナフィラキシーショック)がおきることがあります。この場合、多くは注射直後〜数分でみられるので、ワクチン注射を受けた後、しばらくは病院の待合室で様子を見て、異常のないことを確認してから帰るようにしましょう。また、ワクチン注射後、数時間〜24時間以内に顔の腫れや全身の痒がり、蕁麻疹(じんましん)といったアレルギー症状がおきることがあります。ふつうは自然に回復し、後遺症も残りませんが、数時間たっても症状が治まらなかったり、発熱、嘔吐、下痢といった症状をともなう場合は、早めに診察を受けましょう。過去にこうした症状の見られたことのある犬はワクチン接種を受ける前にかならず獣医師に申告して下さい。注射後数日はシャンプーやトリミング、激しい運動を避けて安静にすることは言うまでもありません。

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